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「50年を経て」

理事長 松尾 昌出子


“光陰矢の如し”と申しますが、財団法人松尾育英会が創立されてから早いもので50年・半世紀が経ちました。この50年は、私にとりましては早くもあり又長き道のりでもあったように思われます。

創立者松尾國三・波儔江は家庭の貧困故に小学校も卒業出来ず、早くから社会に出て苦労に苦労を重ね、実社会を学問の場として自らの道を切り開き、生きて来ました。

ある時、「自分がちゃんと学問を学んでいたら、もっともっと国家の為になる事業が出来たのではないか?」と思い、自分の学識のなさを憂い学問の必要性をひしひしと感じ、日本の戦後の混乱期に「経済的な理由で勉学の道を閉ざされる青年の力になりたい」との思いから、この松尾育英会を創立いたしました。「社会に役立つ人間を育てるには、ただ学費を支給するだけでは意味がない」と考え寮を建て、そこを学問の場・人間を磨く場として提供し、学生として過ごす4年間の全ての費用を支給はするが返済義務はなし、という稀有な育英事業を始めました。創立にあたり色々な方から強い反対があり「そのような育英会を継続して行くのは不可能であるから許可出来ない」と当時の文部省からの通達もありましたが、一旦思い立ったら諦めない人で、当時文部次官をしておられた西岡武夫先生のご尽力もあり、1957年にようやく財団法人松尾育英会が発足いたしました。

一個人が行う育英事業ですから大々的なことは出来ません。わずか11人からスタートした松尾育英会で、その後もまさに遅々たる歩みではありましたが、現在までに230人を世に送り出し、現在20数名の学生が在寮しております。

50年前、父國三が戦後日本の発展への夢を託して蒔いた11の種に始まり、毎年蒔きつづけた230の種が芽を出し花を咲かせ実を結び、日本だけに留まらず世界各地の様々な分野でそれぞれの信念に基づき、松尾育英会のモットーである「社会に役立つ人間」として活躍していることは、この松尾育英会の喜びでもあり誇りでもあります。と同時に両親亡き後の松尾育英会を託された私にとりましても、この事業に携われることは無類の喜びであり、父への感謝の気持ちを忘れたことはありません。

半世紀にわたる様々な時代を経て今日まで松尾育英会を存続して来られたのも、各時期の理事の方々や寮監・寮母さんはじめ事務局更には同窓会の皆さんの支えがあったればこそで、これを忘れてはならないと思っております。

16年前から松尾育英会は海外からの留学生も受け入れることとし、現在まで29人の留学生を受け入れて来ました。松尾育英会は、今後更なる歳月を日本の社会のみならず世界の各地に「社会に役立つ人間」を送り出す教育の場として、創立者の「熱き思い」を大切に存在し続けたいと思っております。

(平成18年4月1日発行 創立五十周年記念特集号 松英通信より)